AI inside は、日本のAI-OCR分野において5年連続でトップシェアを維持しています。同社の最新製品Leapnet を含め、独自開発したLLMを搭載しています。また同社が掲げている「Work with Buddy」は、AIは単なるツールではなく、人と協働するパートナーであるという考えです。
本社所在地: 東京都
設立: 2015年8月
従業員数: 130人
AI inside は、日本で最も広く利用されているAI-OCRソフトウェアを開発しています。政府機関や大企業を含む3,000以上の組織が、同社の製品「DX Suite」を活用し、請求書や医療関連報告書などの紙文書をデジタルデータに変換しています。
2025年、AI inside は、企業が自社の内部データをAIエージェントに変換できるプラットフォームLeapnet の開発に着手しました。エンジニアの大西啓貴が入社して2日目、CTOの井上拓真から与えられた使命は「この組織の開発能力を数十倍に引き上げてください」でした。
Leapnet プロジェクトは、2人のエンジニアが配属され、「3人目のチームメンバー」としてDevinが起用されました。このプロジェクトは、当初予定されていた開発期間の6ヶ月以上から、わずか3ヶ月でリリースされました。AI inside のVPoE 三谷 辰秋氏は、後に次のように述べています:
「Devinがなければ、エンジニアが10人ほど必要だっただろう」
三谷 辰秋, VPoE, AI inside
Devinを採用する前に、いくつかの既存のAIコーディングツールと自律型エージェントを評価しました。評価の中の最優先基準は2つあり、一つはツールが「作業単位(unit-of-work)」レベルで自律的に実行できるかどうか、もう一つはエンタープライズ規模の巨大なコードベース上で安定して動作できるかどうかでした。
AIコーディングツールは有用でしたが、調査から実装、プルリクエストの作成までの一連のタスクを任せることができませんでした。一方で、他の自律型エージェントは PoC作成など局所的な場面では有用でしたが、大規模な既存システムの開発・運用・管理も含めた幅広い対応は難しいと感じました。
「Devinは、DX Suiteのような60以上のリポジトリを自律的に探索・修正できる唯一のツールでした。探査してるDevinを見ていると私はまるで画面の向こうにエンジニアがいるかのようで、誰もがAIとチームメイトとして協働するという弊社の『Work with Buddy』というコンセプトを体現してるように感じました。」
大西 啓貴, AI inside
AI inside にとってLeapnet のリリースにDX Suite からエンジニアリングチーム全員を割くことは難しく、同社はこのプロジェクトにエンジニア2名を配置しました。つまり、2名で対応できるだけの仕事と、実際にプロジェクトに必要な仕事とのギャップをDevinが埋めてくれることを確信していたのです。
エンジニアたちは、作業のあらゆる過程でDevinを活用しました。まず、Devinにリポジトリをスキャンさせ、データフローをマッピングして既存システムを把握させました。続いて、設計に移る前に、対話を通じて機能の実現可能性を検証しました。設計者はFigmaでUIのモックアップを作成し、エンジニアはFigmaの出力をDevinに入力してフロントエンドコードを生成しました。さらに、バックエンドとインフラ作業を並行して進めるため、Devinセッションを同時に実行しました。
ローカル環境では正常に動作していたコードがステージング環境で失敗した際も、DevinはAWSやGCPから直接ログを取得し、エラーの原因を追跡して修正まで行いました。これにより、従来2時間かかっていたデバッグ作業が約30分に短縮されました。また、Devinの出力が期待通りでなかった場合は、エンジニアたちはそのセッションを破棄して一からやり直すこともありました。Devinは独自のインスタンス上で独立して動作するため、こうした試行錯誤のコストを既存より下げられるからこそ実現できた開発スタイルです。
このプロジェクトは、当初6ヶ月を超えると見込まれていましたが、実際は約3ヶ月で設計段階から最初のリリースへと至りました。チームメンバーは、約3倍以上の作業スピードアップを体感しており、一度に3〜4つのDevinセッションを並行して実行できたことが大きな要因であると考えています。実際に1人あたりのプルリクエストマージ件数は、過去実績と比較して3.5倍以上のペースで増加しています。
Devinの影響は、フラッグシップ製品構築にとどまらず、保守・運用にまで及びました。
DX Suite は60を超えるリポジトリを網羅しています。あるDockerベースイメージのバージョンがサポート終了(EOL)を迎えた際、ひとりのエンジニアがDevinにアップデート情報と指示プロンプトを1つ与えました。するとDevinは60以上のリポジトリすべてを検索し、影響を受ける8〜9つのリポジトリを特定して各バージョン番号をアップデートしたうえで、プルリクエストを作成しました。以前はエンジニア2人がかりで5日間かかっていた一連の作業に対して、Devinに要した時間は30分足らずでした。
サポート対応において、チームはDevinをNew Relicに連携させ、初期段階の根本原因調査を実施しました。以前は手作業によるログ照合やリポジトリ横断検索に半日を要した作業が、今では1時間ほどで完了しており、そのうち人間による作業は15分程度で済みます。「これは単なる自動化にとどまらず、新たな才能を生み出したのです」と大西は語っています。
エンジニア以外の社員もDevinの用途を見出しました。例えば会計チーム所属のある社員は、コーディング経験はほとんどないにもかかわらず、Devinを使って、ExcelファイルやPDFからデータを抽出、さらにAPI経由で支払依頼書を作成する高度なワークフロー自動化ツールを構築しました。
これまで2〜3日かかっていた毎月の経理業務が、約半日に短縮される見込みです。エンジニアでなくとも、Devinを使えば技術的な問題を解決できるのです。
2025年初頭にチームがDevinの利用を開始した当初、その利用率はGitHub Copilotとほぼ半々でしたが、秋までに80〜90%がDevinへシフトしていました。精度が向上したことで、チームは他種モデルと照合して回答を再確認せずに済むほどになりました。
「Knowledge」「Playbooks」「Secrets」といった機能により、Devinは環境設定手順、認証情報、クラウドインフラストラクチャに確実にアクセスできるようになり、その適用範囲はユニットテストやフォーマット調整にとどまらず、包括的な調査、UI検証、ステージング環境でのデバッグにまで拡大しました。そしてチームは、一つひとつの勝利の積み重ねを通じて自信をつけていきました。
AI inside は現在、要件定義やシステム設計といった初期段階からDevinを活用することを前提に、開発プロセスの再設計を進めています。大西氏は次のように語ります:
「AIの導入により実装スピードが飛躍的に向上したため、次の課題は『AIは思考そのものをどこまで共有したり、担ったりしてくれるのか』という点です」。
大西 啓貴, AI inside
そのアプローチとしてAI inside が特に注目しているのが、いわゆる「競争型開発」です。これは、Devinに異なる2つのアプローチで実装機能を同時に構築させ、どちらが最適かを比較検討するというものです。従来の手動開発ではコストがかかりすぎて現実的ではありませんでした。「Devinはまさに『可能性の塊』だと確信している」と大西は言います。「ほとんどのAIツールはコーディングに重点を置いています。しかしDevinは、開発プロセスを全面的に変えることができます。エンジニアだけでなく、会社全体での製品開発にシームレスに参加する世界が実現するかもしれません」。